公認会計士への道

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Q002:短答理論科目の対策について

過年度受験生です。

 

財務諸表論、企業法、監査論の点数が50%前後で伸び悩んでいます。一問一答は2〜3回転したのですが、イマイチ理解度が上がってきません。

 

何か抜本的な改善の必要性を感じているのですが、学習する際どのようなところに意識を向ければよいですか?

 

また一問一答で出てきたものでインプットのレジュメに載っていないものはどうすればよいですか?(原文のまま)

 

匿名希望

 

この手の理論の短答対策に関する質問は多かったです。

 

質問者さんは、ズバリ「落ちるべくした落ちた受験生」だということが文面からもはっきりと読み取れます。

 

一問一答を2,3回転やって、理論科目の得点が50%前後ということなので、点数が上がってこない要因は複数混在しています。

 

キーワードはこれ↓(ここでは、合格点を70点だと仮定します。)

 

1.一問一答上滑りシンドロームの回避(60点取るために必要)
2.「ラダリング」による飛躍的理解(70点取るために必要)
3.合格に対する執念(70点超を取るために必要)

 

この3つの壁を超えない限り、理論科目で合格点を取ることは難しいと思います。

 

では、順次解説していきます。

 

1.一問一答上滑りシンドロームの回避(60点取るために必要)

 

一問一答は○×の正誤判定がその場で確認できるアウトプット形式の問題集であり、
知識確認の即効性が高いというメリットがあるため、多くの受験生が使用している教材だと思います。

 

反面、一問一答には

 

・知識が断片的になりがち(横断性、網羅性にかける)
・結論重視の思考を形成しがち(理由付けにまで意識が向かなくなる)

 

というデメリットも有します。

 

質問者のように一問一答をただ繰り返すだけで、点数が伸びないのは、
文字通り「ただ機械的に繰り返している」からです。

 

関連するレジュメやテキストに戻って、規定の意味を理解しようとする姿勢を見せないと
断片的な知識の穴を埋めることができず、理解が不十分な状況を放置することになります。

 

例えるならば、

 

穴の開いたバケツに、一生懸命水を注いでいる状態

 

なのです。

 

これでは、いつまでたってもバケツに水はたまりません。

 

では、なぜ「ただ繰り返す」という学習をやってしまうでしょうか?

 

それは、繰り返す(回す)こと自体が、力が付く勉強をしているという錯覚に陥ることに起因します。

 

「今日は一問一答を50ページ分進めたぞ。」

 

本人は充実感を感じているかもしれませんし、実際、勉強はやっています。

 

しかし、それが力が付く勉強だったかは、○×の正誤判定後の向き合い方にあるのです。

 

単なる表面上の正誤判定だけで満足してしまう人に陥りがちな症候群

 

それが

 

一問一答の上では正誤判定できるものの、少し文脈を変えた問題に対処できない

 

というものです。

 

これが、一問一答だけで上滑っている状態、名付けて「一問一答上滑りシンドローム」
なのです。

 

では、どうやってこの「一問一答上滑りシンドローム」を解消するのか。

 

原点に戻り、インプット時に使用したレジュメやテキストに戻って、周辺論点も確認しながら
アウトプットの論点とインプット論点を紐付ける(=トレースする)必要があります。

 

くれぐれも○×の表面的な正誤判定だけに終始しないこと。

 

これは極めて重要なことだと思います。

 

 

この一問一答上滑りシンドロームを回避できるだけで、得点は60点台に乗せることができるはずです。

 

しかし、これでは合格点に届きません。

 

更なるプラスαが必要なのです。

 

60点を70点にするために必要な思考、これが「ラダリング」の徹底です。

 

2.「ラダリング」による飛躍的理解(70点=合格点を取るために必要)

 

ラダリングはこちらにも記載した通り

 

なぜ?を繰り返していくことですが、会計士試験の場合ですと

 

なぜ?を通して会計基準の趣旨や理由を理解する行為

 

だと思って頂ければと思います。

 

これが、近年、現場思考型の出題に移行している「財務諸表論」と「監査論」で合格点を取るために必要なアプローチなのです。

 

具体例で示します。

 

例えば、財務諸表論の一問一答に

 

「自己株式の取得に関する付随費用は、営業外費用に計上する。」 ○か×か?

 

という問題があったとします。

 

答えは当然○な訳ですが、これを関連するインプット教材にトレースします。

 

これで「一問一答上滑りシンドローム」を回避します。

 

そして、この問題から更なるレベルアップを図ります。

 

それが「ラダリング」です。

 

なぜ、営業外費用に計上するのでしょうか

 

これを徹底的に考えていくのです。

 

以下、松本講師の頭の中

 

自己株式の付随費用は株主との直接的な取引ではない(証券会社との取引だよね。)

 

だから、資本取引(身内取引)ではなく損益取引(他人取引)

 

損益取引における損益はいつ確定させるべきだろう?

 

そりゃ、売った時でしょ。

 

でも、自己株式を売る時は、相手が身内になるから資本取引じゃん。
(だから自己株式は売却といわず、処分というのです。)

 

じゃあ、買った時に費用計上しないとね。

 

そして自己株式はB/S資本の部に係る「財務活動」だよね。

 

ゆえに、財務活動上のコストだから「営業外費用」

 

上記のようにラダリングを繰り返していけば、大いなる福音としての「副産物」を手にすることができます。

 

それが、

 

周辺論点の体系的かつ横断的なつながりが捉えられ、理解力が飛躍的に向上する

 

という副産物です。

 

もう少し続けてみます。

 

以下、松本講師の頭の中(続き)

 

商品の購入時の付随費用や固定資産の購入時の付随費用、売買目的有価証券の付随費用はどうだろう?

 

いずれもオーナーとの取引ではない(クロネコヤマト、エアコン設置業者、野村証券などをイメージ)から、損益取引(他人取引)だよね。

 

損益は売った時に確定でしょ。

 

だから、購入時には取得原価にしておいて、売却時に費用計上させればOK

 

同様に、

 

自己新株予約権の付随費用はどうだろう?

 

自社が発行した新株予約権を買い戻す時点で、相手はもはや他人。(潜在的身内候補でしたが、他人確定です。)

 

だから、購入時には取得原価にしておいて、売却時に費用計上させればOK

 

さらに

 

連結についても理解を拡張していきます。

 

親会社(ジャイアン)、子会社(のび太)、非支配株主持分(スネ夫)  ←講義ではいつもこれで説明してます。

 

連結の世界の親会社(ジャイアン)は子会社(のび太)を支配しているが、
非支配株主持分(スネ夫)は心の友であり、スネ夫との取引は資本取引(身内取引)

 

だから、子会社株式の追加取得や一部売却はジャイアンとスネ夫との持分の交換取引

 

ジャイアン目線では資本取引

 

ゆえに変動差額はすべて、「その他資本剰余金」

 

スネ夫目線では、ジャイアンはただの暴君で他人そのもの(身内なんてとんでもない!)

 

ゆえに売却差額は損益取引であるから、「関係会社株式売却損益」(これが、持分法の一部売却)

 

さらにさらに

 

連結範囲の変更を伴わない子会社株式の取得による支出(今回、連結C/Fで出題された改正論点)についても考えます。

 

ジャイアン目線では資本取引だから、スネ夫から株式を買い上げる行為は自己株の処分同様、ファイナンスの一環

 

だから、財務活動によるC/Fに区分

 

このように派生的に理解が及べば、

 

聞いたことのないその場で考えさせるような問題に現場思考で対処する力を養成することができます。

 

この「なぜ?を考える力」は、論文では最重要になります。

 

是非、押さえておいてくださいね。

 

ちなみに「なぜ?」を問わせるのは、ほぼ100%、実務家(公認会計士)の試験委員です。

 

会計基準に記載なきものを現場で判断し解決するのが真のプロフェッショナル

 

だからです。

 

実務における判断のよりどころは、既存の会計基準の趣旨(なぜ、その制度規定になっているのか?)であり、
そこから帰納的に解決策を導出していきます。

 

私が試験委員でも、会計基準に載っているものをそのまま出題することはないと思います。

 

覚えたものを単にアウトプットするのは、今や人間よりもグーグルやウィキペディアの方がはるかに優秀です。

 

だから、「考える力を養成してくださいね。」という実務家の趣旨は私としては理解できます。

 

○×正誤判定という「答えのその先」まで求められるのは
短答受験生には酷な状況だと思います。

 

但し、ラダリングによる趣旨や理由の理解は上述した通り、論文では最重要思考です。

 

どの道立ちはだかる壁であるならば、時間のあるうちに「なぜ?を考える力」を
養成して頂ければと思います。

 

 

そして、最後の3点目

 

合格に対する執念(70点超を取るために必要)

 

これが、合格点以上の点数を取るために必要なマインドセットです。

 

質問者は
>一問一答で出てきたものでインプットのレジュメに載っていないものはどうすればよいですか

 

という文面で締めくくられています。

 

逆に聞きます。

 

一問一答で出てきたものでインプットのレジュメに載っていないものはどうしたいのですか

 

本当に合格する気がある人は、質問する前に何とかしようと必死になって自分で考えます。

 

レジュメに書き残したり、簡易メモを作成したりする気はないのですか?

 

こんな、バカな質問しちゃいけないですよ。

 

記憶を定着させようとする意志や合格に対する執着心、必死さが質問者の文面からは感じ取れない。

 

冒頭に「落ちるべくして落ちた」というのはここにあります。

 

この程度の執着心なら、次回も不合格を繰り返すことになります。

 

合格者の合格に対する執念(ゼッタイに受かってやるという気持ち!)
は圧倒的な存在感を放ち、
「覇王色の覇気」の如く、他を寄せ付けないオーラすら纏います。

 

その気持ちが、合格点以上を得点できる人に共通するマインドなのです。

 

以上です。

 

長くなりましたが、最後までお読みいただきありがとうございました。

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