会計士の勉強は実務で絶対役立つ!!
どうも、松本です。
今回は2018年の11月に突如として浮上した日産の「ゴーン問題」について、会計士受験生向けに様々な観点から考察を加えてみます。
とても長いので、お時間のある時に、ゆっくりお読み頂ければと思います。
まず、2018年12月末時点で判明している問題点は大きく分けて2つあります。
1.役員在任中の5年間に本来、有価証券報告書に記載すべき報酬(年間10億円)を記載しなかった問題(以下、「虚偽記載問題」)
2.リーマンショックの際にスワップ取引の失敗から生じた18億円に及ぶゴーン氏の個人的な損失を、日産の子会社に負担させた問題(以下、「損失飛ばし問題」)
このゴーン問題を解説することを通じて、「会計士の勉強が、いかにリアルビジネスに役立つのか」ということをお伝えしていきたいと思います。
最後まで頑張って読んでみて下さい。
まずは、「虚偽記載問題」からいきます。
1.「虚偽記載問題」の背景
2011年3月期から15年3月期までの計5年間の役員報酬が実際には約100億円だったのに、有価証券報告書には約50億円と過少に記載していた問題です。
直近の業績はもちろんのこと、現在の事業(ビジネス)の状況や従業員の状況、設備投資の状況などを利害関係者に報告する「会社の成績表」が有価証券報告書(以下、「有報」)であり、上場企業は金融商品取引法により作成が義務付けられています。
この有報には、「コーポレート・ガバナンスの状況」という項目があり、この中で「年間の役員報酬が1億円以上の取締役」を個別に開示して、その報酬額を記載する必要があります。
2015年3月期の有報には、ゴーン氏に対する役員報酬が1,035百万円である旨の記載があります。
この役員報酬が、実際には20億円(2,000百万円)だったのではないか?
だとすると、有価証券報告書の虚偽記載に当たるのではないか?
これが、金融商品取引法違反の疑いでゴーン氏が東京地検特捜部により逮捕・起訴された経緯になります。
その後の報道で、差額の10億円(5年間トータル50億円)は「日産の取締役退任後に受け取る。」という覚書の存在が明らかになっています。
ゴーン氏側としては、この金額は未来に受け取るものだから、現在の有報には記載する必要はないとの見解を示しています。
東京地検特捜部としては、例え未来に報酬を受け取るものだとしても、現在の労務との対価性が認められる以上は、現在の有報に記載すべきであるとの見解によっています。
正直に「年額の役員報酬は20億円です。」
と記載しておけば、このような問題は生じなかったのかも知れません。
この点、日本では高額所得者に対する世間の風当たりが強いです。(「報酬もらい過ぎ。」「従業員の給与を上げろ。」「内部留保を配当で還元せよ。」等)
経営陣には「役員報酬を過少に記載したい。」というインセンティブが働くことが、今回の問題の根底に存在しているように思います。
では、ここから公認会計士の実務家である私が、様々な角度からこの問題を解説していきます。
以下、専門用語のオンパレードです。
これから会計士の勉強を志す方は、「会計士の勉強がビジネスにめちゃくちゃ活用できるということ」
既に会計士の勉強を行っている方は、「各科目の勉強は密接にリンクしていて、実務ではそれらを応用して考えていくということ」
を感じて頂ければ幸いです。
会計上、税務上、監査上、法律上、経営上、国際上の観点から、それぞれ順番に考察を加えています。
では、行きましょう。
ここから、スタート!
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2.会計上の観点
支給することは確定しているものの、支給額自体が未確定なら、「役員退職慰労引当金」
支給することも、具体的な支給額も確定しているなら、「未払金」⇒東京地検特捜部の見解はこっち。
支給するかどうかさえも未確定なら、「偶発債務」⇒ゴーン氏の見解はこっち。
会計上の結論
・東京地検特捜部はオンバランスすべきと主張(有報に、正しく役員報酬の額を記載せよ。)
・ゴーン氏はオフバランスで問題ないと主張(覚書を交わしたものの、報酬を受け取る確約がなく、有報への記載義務はない。)
上記、見解の相違が会計上の観点から浮かび上がります。
なお、東京地検特捜部の見解を仕訳で示すと、下記の通りになります。
(借)役員報酬 10億 (貸)未払金 10億
これが「ベースver.1.0」の仕訳になります。
3.税務上の観点
役員報酬は、「定期同額給与」(毎月、同じ金額の報酬であることが必要)が大原則です。
そうじゃない場合(決まった月に決まった金額を払いたい場合)は、事前に税務当局に対する届出が必要です。
日産の経理部も預かり知らないような事案なので、日産の幹部が事前に届出まで済ませているとは考えられません。
以上より、過去のゴーン氏に対する役員報酬は税務上は損金不算入となります。
つまり、役員報酬につき、会計上は費用処理が可能でも、税務上は損金不算入となります。
したがって、減少した当期純利益と同じ額が損金不算入により課税所得計算に加算されることになり、結果的に会計処理の前後で課税所得は変わりません。
それゆえ、過去に遡って修正申告を済ませたとしても、基本的に過去の納税額は変わりません。
しかし、将来ゴーン氏に支払う役員報酬が確定しているのならば、支給時の損金算入が認められます。
これは、いわゆる「将来減算一時差異」に該当します。
従って、会計上は税効果を取ることを検討しなければなりません。
また、数年前の財務諸表を訂正することになるので、会計上はいわゆる「過去の誤謬の訂正」にあたります。
過年度の損益(今回の「役員報酬」)はすべて、貸借対照表上では「利益剰余金」(厳密には、株主資本等変動計算書上の「利益剰余金当期首残高」)で受けることになるので、過去の誤謬の訂正仕訳は
(借)利益剰余金 10億円 (貸)未払金 10億円
が「ベースver.2.0」の仕訳となります。
ここから更に2つの検討を加えます。
まず1つ。
ゴーン氏に支払う報酬が今から5年後だと仮定するならば、未払金10億円は日産の無リスク利子率に基づく資本コストで現在価値に割り戻す必要があります。
日産の資本コストを2%だと仮定すれば、10億円÷(1.02)5乗≒9億円より
5年後に支給する役員報酬の計上仕訳は
(借)利益剰余金 9億 (貸)未払金 9億
1年ごとに2%の利息費用を認識していくので、
(借)利益剰余金(利息費用) 0.2億 (貸)未払金 0.2億
を計上していきます。これが「ベースver.3.0」の仕訳です。
2つ目は繰延税金資産の回収可能性の検討です。
繰延税金資産については、日産の過去の業績と課税所得から回収可能性を検討する必要があります。
2015年3月期を中心に考えると過去3年間は、毎期、当期純利益を計上しており、経営的には安定しています。
過去3年間の当期純利益の平均は357,195百万円です。(有報の「主要な経営指標等の推移(ハイライト情報)より)
2015年3月期の当期純利益は457,574百万円です。
税務申告書は開示されないので、課税所得の額を直接知る術はありませんが、当期純利益≒課税所得だと仮定すると、
「繰延税金資産の回収可能性に関する適用指針」における(分類1)の企業に該当します。
(分類1)の企業の定義
(1) 過去(3 年)及び当期のすべての事業年度において、期末における将来減算一時差異を十分に上回る課税所得が生じている。
(2) 当期末において、近い将来に経営環境に著しい変化が見込まれない。
「(分類1)に該当する企業においては、原則として、繰延税金資産の全額について回収可能性があるものとする。」(適用指針18項)という規定により、ゴーン氏に対する役員報酬は将来減算一時差異に税率(30%と仮定)相当を乗じた金額について、繰延税金資産を計上することになります。
以上より、
(借)利益剰余金 9億 (貸)未払金 9億
(借)繰延税金資産 2.7億 (貸)利益剰余金 2.7億
これが「ベースver.4.0(Final)」の単年度における修正仕訳になります。
ちなみに、今回の報道を受けてなお、ゴーン氏の退任後に巨額の報酬を受け取る契約は、今の日本の世論が許さないでしょうから、そもそも、退任後の報酬を受け取れない可能性が浮上してきます。
この場合には、税効果も不要ですし、未払金の計上自体も不要になります。
税務上の結論
過去の納税額に影響は及ばない。
未来の納税額は少なくなる可能性がある。(支給時に損金に算入されるから。)
4.監査上の観点
日産は新日本有限責任監査法人(以下、「親日」)が担当しています。
2015年3月期において新日は財務諸表監査について「無限定適正意見」を表明しています。
日産の連結損益計算書の2015年3月期における「税金等調整前当期純利益は687,421百万円」です。
監査上の重要性(監査において、財務諸表全体レベルで重要な虚偽表示だと考える金額)は「税金等調整前当期純利益×5%」が一般的です。
687,421百万円×5%=34,371百万円(これが、監査論で学習する「重要性の基準値」です。)
実際の実務では、ここから更に25%程度のストレスをかけることが一般的なので、実務における「重要性の基準値」は34,371百万円×(1−25%)=25,779百万円になります。(絶対ではありません。あくまで予想です。)
「手続実施上の重要性(財務諸表項目レベルで重要な虚偽表示だと考える金額)」は「重要性の基準値×5%」が一般的です。
従って、「手続実施上の重要性」は25,779百万円×5%=1,289百万円となります。
上述した役員報酬として修正を要する金額は9億円(=900百万円)です。
これは手続実施上の重要性を上回りません。
従って、これだけ大きな社会問題になっていても、監査報告書上の監査意見には特段重要な影響は及ぼしません。
また、今回ゴーン氏が有価証券報告書の虚偽記載で逮捕・起訴されたのは、「コーポレート・ガバナンスの状況」に記載される役員報酬の額です。
監査法人が行う監査証明は日産の有価証券報告書の「経理の状況」に限定されます。
「コーポレート・ガバナンスの状況」は監査証明外なので、この点からも財務諸表監査上の問題とはなりません。
むしろ問題になるのは、内部統制監査の方です。(日産は上場企業なので、内部統制監査は必須です。)
経営者の不正を防止する仕組みを社内に構築しておらず、取締役会による監視が事実上機能していないことに起因します。
但し、財務報告の観点からは金額的影響は上述の通り、軽微であると判断します。(監査論学習者は、財務諸表監査と内部統制監査の重要性が同一水準であったことを思い出して下さい。)
従って、監査論でいうところの「開示すべき重要な不備」には該当しないものと考えられます。
とどのつまり、財務諸表監査においても内部統制監査においても親日は「シロ」です。
むしろ、業務監査権限を担う「監査役会の監査報告書」において、大きな影響が及びます。
とは言え、監査役会の監査報告書は「会社法監査」のお話であって、「金融商品取引法監査」の範囲外です。
換言すれば今回のゴーン氏の報道(金商法違反による逮捕)とは無関係です。
監査上の結論
監査法人の対応に問題はありません。(公認会計士はセーフ)
監査役会の対応には問題があります。(監査役はアウト)
5.法律上の観点
「虚偽記載問題」は金融商品取引法第24条(有価証券報告書の提出)違反と同第197条(罰則に関する条文)が適用されます。
違反者には十年以下の懲役若しくは千万円以下の罰金(又は両方)が課せられます。
法律上の結論
ゴーン氏は「虚偽記載問題」で起訴されています。
検察の起訴は99.9%有罪になります。
最終的な結論は裁判所に委ねられますが、まず「クロ」であると考えて間違いないでしょう。
まず、ここまでが「虚偽記載問題」についての考察です。
では、次に「損失飛ばし問題」についても同様の考察を加えていきます。
6.「損失飛ばし問題」の背景
リーマンショックの際にスワップ取引の失敗から生じた18億円のゴーン氏の個人的な損失を、日産の子会社に負担させた問題
厳密には、ゴーン氏が有する資産管理会社(ペーパーカンパニー、以下「A社」)が被った金融商品の損失を、日産の子会社(以下、「B社」)に肩代わりさせたという問題です。
7.会計上の観点
わかりやすく、金融商品の取得価額を18億円、時価を0円と仮設してみます。
損失の飛ばしは、A社の金融商品をB社に簿価で買い取らせることで行われます。
A社の仕訳(実際)
(借)現金預金 18億 (貸)金利スワップ 18億
B社の仕訳(実際)
(借)販売促進費 18億 (貸)現金預金 18億
現時点の報道では、販促費名目による支出だとされています。
B社の正しい仕訳は、
(借)役員(関係会社)貸付金 18億 (貸)現金預金 18億
です。
貸付金処理がなされる理由は、金利スワップの譲渡が金融資産の消滅の要件を満たさないことに起因します。
A社が日産グループの連結子会社であれば、子会社同士の取引は連結上は相殺消去されるので、連結上のインパクトはありません。
しかし実際にはA社は、日産の連結対象から除外されている可能性が高く、この場合にはB社において、以下の訂正仕訳を切る必要があります。
(借)役員貸付金 18億円 (貸)販売促進費 18億円
8.税務上の観点
少しややこしいのでシンプルに。
A社は、適正価値0円の金融商品を18億円で譲渡しているので、当該売却益相当の18億円が法人税の申告書上、益金に認定されます。
会計上は譲渡には該当しませんが、税務実務では後述する「行為計算の否認」規定の拡大適用により、租税回避行為だと判断されれば、税務当局は容赦なく益金認定してきます。(ここについては解釈の余地がありますが、会計上の譲渡の否認が税務上も認められた場合には、納税が生じない可能性もあります。)
従って、30%の税率を乗じた5.4億円の追徴課税が生じます。
更に以下の2つうちのいずれかの加算税が徴収されます。
過少申告加算税(申告書に記載された納税額が過少であった場合に課される税金)認定なら納付税額の20%
重加算税(事実を仮装隠蔽し申告を行わなかった場合、又は仮装に基づいて過少申告を行った場合に課される税金)認定なら納付金額の35%
本件の悪質性に鑑みると、後者に該当する蓋然性が高いので、5.4億×35%=1.9億円の追徴が想定されます。
つまり、18億円の仮想隠蔽行為に伴って、7.3億円(5.4億+1.9億)の追徴課税が発生します。(A社が日本の場合)
A社は海外(サウジアラビア)に所在しているとの報道があるため、実際の納税額はこの限りではありません。
B社の販売促進費名目での支出は、会計上は「役員(関係会社)貸付金」ですが、私が税務当局の国税専門官(マルサ)の立場ならば、「貸付金」認定はしません。
おそらく、「使途秘匿金」認定を下すと思います。
使途秘匿金とは、相手方の所在地や支出名を隠匿して(これは、A社のことではなく、A社の背後にいるゴーン氏のこと)なされた支出であり、使途秘匿金と認定された場合には、「使途秘匿金×40%」を追徴することになります。
これは、租税法でいうところの「行為計算の否認(会社の納税を不当に回避する形式的には適法な行為を否定して、実質的な点から納税を強制する税務当局の伝家の宝刀)」規定を本件に適用することを意図します。
「貸付金」認定なら税率の30%を追徴することになるため、税務当局からすれば、「使途秘匿金」認定の方が徴収税額が多くなるので、罰則的意味合いを込めて、こちらを認定する可能性が高いと考えます。
以上より、18億円×40%=7.2億円がB社に対する追徴課税となる可能性が高いものと思われます。
☆税務上の結論(A社、B社がともに日本に所在する場合)
A社は7.3億円の追徴課税がなされる可能性が高い。
B社は7.2億円の追徴課税がなされる可能性が高い。
9.監査上の観点
A社はペーパーカンパニーなので、非上場ゆえ監査は必要ありません。
B社は日産の子会社なので、連結目的での監査は必要です。
上述したB社の訂正仕訳は
(借)役員貸付金 18億円 (貸)販売促進費 18億円
です。
上記仕訳は2009年3月期(リーマンショックの時期)に反映すべきものなので、「過去の誤謬」に相当する以上、有報に反映すべき仕訳は
1つ目の仕訳
(借)役員貸付金 18億 (貸)利益剰余金 18億
になります。
追徴課税の発生可能性が50%を超える場合、(これを実務では「more likeiy than not」と言います。)
2つ目の仕訳
(借)利益剰余金 7.2億 (貸)繰延税金負債 7.2億円 ←追徴課税見合いの金額
を追加計上します。
2つの仕訳の合計が、いわゆる「未修正の監査差異」に相当します。
上述した「手続実施上の重要性」が1,289百万円だとするなら、18億円(1,800百万円)は財務諸表項目(アサーション)レベルでは重要性が高いと判断します。
監査論的に言うならば、役員貸付金の網羅性という監査要点については「十分かつ適切な監査証拠」を入手できない。
という言い方が会計士受験生には分かりやすいかも知れません。
しかし、財務諸表全体レベルで「適正性命題」を立証するための「意見表明のための基礎」を得たかどうかは、「十分かつ適切な監査証拠」を総合的に評価して決定されます。
財務諸表全体レベルでの重要性の基準値が、25,779百万円であったことを考えると、私が親日の監査責任者(パートナー)の立場なら、1,800百万円は財務諸表全体レベルでは軽微であるとの総合的評価を判断として下します。
つまり、「無限定適正意見」を表明します。
☆監査上の結論
過去の監査報告書を差し替える必要はなく、「無限定適正意見」を表明している2009年3月期の監査意見に重要な問題はない。
10.法律上の観点
「損失飛ばし問題」は会社法第960条違反です。いわゆる「特別背任罪」に該当します。
(取締役等の特別背任罪)
第九百六十条 次に掲げる者が、自己若しくは第三者の利益を図り又は株式会社に損害を加える目的で、その任務に背く行為をし、当該株式会社に財産上の損害を加えたときは、十年以下の懲役若しくは千万円以下の罰金に処し、又はこれを併科する。
一 発起人
二 設立時取締役又は設立時監査役
三 取締役、会計参与、監査役又は執行役
四 以下、省略
要するに、「ゴーン氏が被った損失を、会社の損失に付け替える行為は、取締役としてあるまじき背任行為(会社を裏切る行為)だから、懲役刑も罰金刑もあるよ。」という意味です。
もっと意訳すれば、「会社の私的利用は、あきまへんで。」という趣旨の条文です。
☆法律上の結論
会社の私的利用を行った事実は明白であるため、ゴーン氏は完全に「クロ」です。
「虚偽記載問題」については東京地検特捜部との見解の相違があったとするゴーン氏側の言い分については、争う余地があるかと思いますが、「損失飛ばし問題」に争点の余地はありません。
絶対にダメです。
100%有罪です。
続けて、「経営上の観点」について言及したいと思います。
11.経営上の観点(「虚偽記載問題」と「損失飛ばし問題」双方)
日産は問題が発覚した2018年11月から1か月間で株価が8%(11月19日が1,005(1単元=100株)から12月18日が928)ほど急落しました。
日産の発行済み株式数4,220,715,112株です。(2018年12月28日時点)
時価にして、3,250億円が消えた計算になります。
この消えた3,250億円は、どういった性質のものでしょうか?
答えは、「のれん」です。
ゴーン氏の経営方針やカリスマ性、求心力は、いわゆる「自己創設のれん」(自動車業界の同業他社に比して優れている収益力)に該当します。
ゴーン氏というカリスマを失うことに伴う、マーケットからの失望売りが、株価の下落を誘発した原因です。
後述する日産の筆頭株主であるルノーが事業提携を解消すれば、株式の売り浴びせにより、更なる株価の下落を引き起こすことも懸念されます。
経営上は透明性のある内部統制の体制とガバナンス(企業統治)の抜本的な見直しにより、投資家(特に海外投資家)からの信頼を回復することが急務です。
経営上の結論
経営上は株価の回復と、ガバナンスの見直しが急務。
では最後に「国際上の観点」に立って、説明していきます。
12.国際上の観点
日産の筆頭株主は、議決権の43.4%を保有するフランスのルノーです。
そしてルノーの筆頭株主は、議決権の19.74%を保有するフランス政府です。
つまり、今回のゴーン氏問題の背景には、日産の経営のイニシアティブを日本人が主体となって担うのか、フランス人が主体となって担うのか、といういわゆる「プロキシーファイト(委任状争奪戦)」の様相を呈しています。
換言すれば、
日本の東京地検特捜部とフランス政府との代理戦争
とも言えるでしょう。
国際上の結論
日本vsフランス、どちらが日産の主導権を握るのかは執筆時点(2018年12月31日)では不透明です。
今後の行く末を引き続き、注視していきたいと思います。
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はい、ここまで。
いやー、めちゃくちゃ長い記事になりました。
要するに何が言いたかったのか?
ゴーン問題を「虚偽記載問題」と「損失飛ばし問題」に分類した上で、それぞれを「会計上の観点」「税務上の観点」「監査上の観点」「法律上の観点」「経営上の観点」「国際上の観点」から説明させて頂きました。
これらの観点は全て公認会計士の試験勉強を通じて私自身が体得したものであります。
「会計上の観点」:会計学(簿記)
「税務上の観点」:租税法
「監査上の観点」:監査論
「法律上の観点」:企業法
「経営上の観点」:経営学
「国際上の観点」:経営学
だから、、、
会計士の勉強はビジネスを理解するうえで、100%絶対に役立ちます!!!
と、いうことが言いたかったのです。
会計士の勉強を通じて、多面的かつ複眼的な観点から考察を加える力を養成することが可能です。
更に言うと、それぞれの科目は密接にリンクしています。
誤解を恐れずに言えば、
会計学≒租税法≒監査論≒企業法≒経営学
なのです。
いずれも社会科学の領域ですから、最終的にすべての科目は連動しますし、相互に繋がってきます。
ちなみになんですが、アカ凸の講座では全科目を私が一人で担当します。
科目横断的な論点は、一人の講師が話した方が効率的ですし、何より学習負担が軽減されます。
租税法や経営学なんかも講義できるの?
というご質問も頂きます。
絶対にできます!
私は会計士でありますが、同時に税理士でもあり、経営者でもあります。
「税理士」である私が「租税法」を講義できなれば、税理士失格です。
「経営者」である私が「経営学」を講義できなれば、経営者失格です。
「実務家」である私が「実務と理論をリンクさせる」講義ができなれば、講師失格です。
上記のゴーン氏問題のような多角的・複眼的な観点から、会計士試験やビジネスに役立つ知識を講義内でお伝えしていきます。
どうぞ、ご期待下さい!
少し、言いたいことから乖離してしまいました。(すみません。)
話を元に戻します。
いずれにしても、
これから会計士の勉強を志す方は、「会計士の勉強がビジネスにめちゃくちゃ活用できるということ」
既に会計士の勉強を行っている方は、「各科目の勉強は密接にリンクしていて、実務ではそれらを応用して考えていくということ」
だけは、ゆめゆめ忘れないで下さい。
知識として知らないと、そもそも応用して考えるという視点・視野・視座を手にすることができません。
大変な試験ですが、それだけ努力する価値があります!
頑張って勉強を継続していると、いつしかこの勉強には「大いなる意味があること」を理解できる日がやって来ます。
その時まで、諦めずに前を向いて勉強を継続して欲しいと切に願っています。
だから、私は必死で頑張っている全ての会計士受験生を心より応援します!!
以上です。
ものすごい長文になってしまい、失礼しました。
最後までお読み頂き、ありがとうございました。
どうぞ、良いお年をお迎えください。
来年も、LEC、まつブロ、アカ凸をどうぞよろしくお願い致します。
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