公認会計士への道

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審判はプレイヤーになれない。

【ハンドルネーム】
 ぽんず

 

【ご質問、ご相談事項】
 今年32歳になる者です。(離職中、職歴:2社、営業4年)
現在、公認会計士受験を検討しており、監査法人→FAS(バリュエーション)のキャリアを考えています。

 

なぜ、FAS(Val)かと言うと、投資能力(上場株に限らず、非上場株、不動産など様々な資産の価値を見極める能力)を高めて、将来、投資やM&Aを強みに独立したいからです。

 

質問としましては、以下3点です。
@35歳ほどで合格と仮定した場合、監査法人からFASは現実的にあり得るのか?
A年齢的に、監査法人→FASへの転職より、1項・2項業務を同時提供している中小監査法人を目標とした方が良いか?
Bそもそも、上記の投資能力目的の手段として、FAS(val)のキャリアは妥当なのか?

 

以上、お忙しいとは存じますが、何卒よろしくお願い致します。

 

 

どうも皆さんこんにちは。

 

公認会計士の松本です。

 

本日は上記のご質問にお答えしたいと思います。

 

要点が簡潔にまとまっていて、回答したくなるような素晴らしいご質問をありがとうございます!

 

公認会計士受験を検討している段階で、質問Aにある1項・2項業務と記載している当たり、相当リサーチしていることが伺えます。

 

下記に専門用語の補足説明をさせて頂きます。

 

専門用語のご説明

 

FAS(バリュエーション)FASはファイナンシャルアドバイザリーサービスの略であり、バリュエーションとは評価(金額の査定)を差します。

 

例えば、A社が非上場のB社を買収すると考えた場合、B社の企業価値を算定する時に、FASに案件が飛んできます。

 

他には、C社の経営者が亡くなった時に、後継者には株式が相続されますが、その時の株式評価額の算定の際に、FASに案件が飛んできます。

 

見えないものの算定や計算が複雑なものを算定することを、会計の世界ではバリュエーションと言います。

 

1項業務:公認会計士法第2条第1項に記載されている「監査証明業務(分かりやすく言うと、監査論でやっている監査業務)」のことを指します。

 

2項業務:同第2項に記載されている「非監査証明業務(分かりやすく言うと、公認会計士の名前を利用して行うコンサル業務のこと)」です。

 

では、順次お答えしていきます。

 

@について(監査法人からFASの転職の可否)

 

35歳で論文試験に合格した場合、監査法人からFASへの転職は余裕であり得ます。

 

絵空事でもポジショントークでもありません。本当です。

 

なぜなら監査法人もFASも(税理士法人も)めちゃくちゃ人手不足だからです。

 

会計士受験生の方であれば、ご存知の方も多いかもしれませんが、どこの監査法人も人手不足なのです。

 

私が聞き及んでいる情報ですと、東京はもちろんのこと、大阪、名古屋、福岡、札幌、仙台、広島など全国一円、どこもかしこも人員が足りていません

 

なぜ、人手不足なのかは「本日のトピック(ご質問B)」にて言及しますので、ぜひこのまま読み進めて下さいませ。

 

結論として、30代中旬で大手監査法人に入ることも可能ですし、そこからFASへ転職することも現実的には十分可能です。

 

Aについて(1項・2項業務を同時提供している中小監査法人は目標たりえるか?)

 

まず、重要なこととして補足しておきますが、大手監査法人も2項業務は行っていますよ。

 

中小監査法人だけが監査業務とコンサル業務を行っている訳ではありません

 

大手監査法人は2項業務をやっちゃダメ、なんていう規定はありません。

 

大手監査法人やFASの方がむしろ、2項業務に相当するコンサルは充実していると思います。

 

なぜなら、中堅監査法人は、クライアントのラインナップ(上場の有無、規模感、業種、業態)が大手よりも少ないからです。

 

ご質問者さんは、税理士としての独立ではなく、投資やM&Aを強みに独立したいとのことですので、クライアントのラインナップが豊富な大手やFASでコンサル業務を経験される方が良いかと思います。

 

Bについて(投資能力目的の手段として、FAS(val)のキャリアの妥当性の検討)

 

はい、これが本日のトピックです。

 

めちゃくちゃ重要なお話をしますので、心してお読みください。(これは本当に大事なお話です。)

 

では、気合い入れて行きましょう!

 

いきなり結論から。

 

FASやコンサル業務をやったとしても、投資能力(上場株に限らず、非上場株、不動産など様々な資産の価値を見極める能力)は高まりません。

 

絶対にムリです。

 

勘違いしています。

 

本質がズレています。

 

ぶっちゃけると、公認会計士キャリアが10年ぐらいになって、事の本質に気付く方が多いです。

 

だから、多くの受験生や論文合格者が誤解をしています。

 

会計士キャリア18年目の松本翔が日本一分かりやすく説明をして差し上げます。

 

では、改めてご説明をば。

 

上述した通り、FASも監査法人も人手不足です。

 

なぜ、人手不足なのか?

 

というと、多くの先輩(入社3年目〜7年目ぐらいが多い)がドンドン辞めていくからです。

 

ではなぜ、辞めていくのか?

 

それは、FASや監査法人にいても、投資能力が高まらないことに気付くからです。(他にも理由はありますが、今回は投資に限定して言及します。)

 

投資能力が手にできたから辞める訳ではありません。(←ここがポイント!)

 

では、なぜコンサル業務(バリュエーション)に振れているにも関わらず、投資能力が高まらないのか?

 

理由は簡単です。

 

プレイヤーではないからです。

 

簡単な話、当事者ではないからです。

 

上記の事例でも触れましたが、A社がB社を買収する時のアドバイザリーとして会計士が登場します。

 

テレビ番組の「なんでも鑑定団」みたいに金額の査定は会計士が行います。

 

でも実際の取引は当事者であるA社とB社が行います。

 

だから会計士はプレイヤーではなく、審判に過ぎません。

 

野球やサッカーの審判をイメージして頂くと分かりやすいです。

 

サッカーの審判をやったからと言って、サッカーが上手くなるわけではありません。

 

これがタイトル回収です。(審判はプレイヤーになれない。

 

厳密には、審判をやっていてもプレイヤー能力は高くならない、という表現が適切です。

 

だから、コンサル業務を極めるとどうなるかというと、審判能力が高くなるだけです。

 

日本サッカー協会における「3級審判員⇒2級審判員⇒1級審判員(Jリーグ担当)⇒国際審判員(国際試合担当)」

 

みたいなイメージが分かりやすいと思います。

 

国際審判員は、メッシやクリスティアーノ・ロナウドのようなプレイヤー能力がある訳ではありません。

 

じゃあどうやって投資能力を高めるのか?

 

これまた答えは簡単です。

 

それはご自身が当事者になるしかないです。

 

それ以外の方法はありません。

 

「えっ、A社のような経営者になるしかないの?」

 

と思われるかもしれませんが、その限りではありません。

 

ここからが非常に大切なお話になります。

 

当事者というのは、経営者のことだけではなく、資本主義における資金の担い手を意味します。

 

もう一度繰り返します。

 

当事者というのは、資金の担い手です。

 

資本主義の世界におけるプレイヤーは資金の担い手に他なりません。

 

それ以外は審判か観客です。(要するに外野です。)

 

資金の担い手とは、リスクを負って資金のやり取りをする当事者を差します。

 

「じゃあ、コンサル業務もリスクを負った対価として報酬を受け取るから、当事者じゃん。」

 

と思われるかもしれませんが、これまた違います。

 

A社とB社がいないと成立しない時点で、当事者ではありません

 

この意味が分かりますか?

 

まず最初にコンサルありき、ではないんです。

 

まず最初にビジネス(買収)ありき、なんです。

 

その時に企業価値の算定が必要だから、会計士にお願いしよう、となります。

 

だから、A社とB社がプレイヤー、会計士が審判員です。

 

審判員だって、リスクは当然負担します。

 

オフサイドかどうかの判定にはリスクを伴います。

 

イエローカードを出すかどうかの判定にはリスクを伴います。

 

その分、試合が成立した際に報酬を頂くのは当然のことです。

 

でも、決して当事者ではありません。

 

ここを勘違いしている人が多いです。(マジで多すぎます。)

 

かつて、某マツという監査法人のパートナーが、リクルート時に

 

「俺たちが資本主義の中心で日本を牽引しているんだ。だから君もうちに入らないか?」

 

みたいなことを「先生、こんなこと言ってますけど。」って教えてくれた合格者がいました。

 

ムリムリ。

 

勘違いも甚だしい。

 

監査法人は、監査業務もコンサル業務も本質的に資本主義の中心地(一丁目一番地)にはなり得ません。

 

パートナーさん、ビジネスアンダースタンディング(ビジネスに対する理解)が足りていませんよ。

 

 

かくして、資金の担い手たる当事者にならない限りは投資能力が高まらないことがお分かり頂けたかと思います。

 

経営者じゃなくても、投資能力が高まる方法はないのでしょうか?

 

という皆さんの心の声が聞こえてきますので、お答えします。

 

これまた簡単。

 

実際に自分で投資をしてみれば、投資能力は高まります。

 

お金をリスク環境に晒してみる。

 

株式投資(初心者向け)や不動産投資(上級者向け)を実践してみる。

 

最初はごく少額でも全然良いです。

 

例えば、1万円でも良いので、実際に証券口座(楽天証券とかSBI証券等)を開設して、実際に投資をしてみて下さい。

 

株式でも債券でも投資信託でもETF(上場投資信託)でも良いです。

 

お金をリスク環境(上がるのか下がるのか不確実な状況)に置いてみることが重要です。

 

下がったら、「なぜ下がったのか?」を必死で考えるようになります。

 

米国の雇用統計が悪化した影響? とか、

 

WHOトップの発言によりコロナに対する不安心理から売りが先行した影響? 

 

みたいなことを考えるようになります。

 

この思考訓練や経験こそが、投資能力を高める方法に他なりません。

 

よって、この訓練は座学では絶対に身につきません。

 

 

さて、長くなりましたが、最後のご質問に対する私なりの回答を記載したいと思います。

 

Bそもそも、上記の投資能力目的の手段として、FAS(val)のキャリアは妥当なのか?

 

妥当か否かという観点ではなく、そもそも無相関(相関性や関連性がない)です。

 

 

以上です。

 

今日のコンテンツは、お金を払ってでも理解しておくべきビジネス講座であると断言できます。

 

このような素晴らしいご質問をして頂いた「ぽんず」さん、ありがとうございます。

 

引き続き、皆さんからのご質問を受け付けております。

 

最後までお読み頂き、ありがとうございました。

 

22年01月16日 公認会計士 松本 翔

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