アカスクって実際どーよ?
松本先生こんにちは
H29年U回目の短答不合格者です。私は大学4年生なのですが勉強を継続し、12月短答の合格を目指しています。
来年の論文まで受ける上でアカスクに行くか、休学もしくは無職になって勉強を続けるか悩んでいます。アカスクは三振のリスクを抑えられる反面、学費がかかり、最短での合格に対して回り道になってしまいます。
一方で無職、または休学は2018年の合格にコミットしやすい、学費がかからない反面、三振したときのリスクが大きいです。
今は12月短答に絶対合格するために精一杯やることに変わりはないですが、松本先生はどちらがベターだと考えますか?(ハンドルネーム:関西のlec生)
マイド、松本やで。(関西人)
うんうん。これもよくある質問です。
アカスクの一長一短を踏まえてのご質問ですね。
まずは、私の持論から。
アカスクに進学する道については、個人的にはおススメしません。
以下、3つの理由を挙げます。
1.アカスク卒業者(企業法のみ受験)の論文合格率が悲惨なことになっているから。
2.キャリアが形成されないから。(要は学歴として評価されないから。)
3.お金がかかるから。(要は、コスパに見合わないから。)
3は説明不要ですね。大学院の学費って高いんですよ。
その費用に見合うだけのリターンが得られるのか甚だ疑問です。
無職という状態を回避するだけに支払う金額としては、コスパが悪すぎます。
そのお金は貯めておいて、未来の投資のタネ銭に使う方がよっぽど建設的です。
では、ここからが本題。
1.アカスク卒業者の論文合格率について
下記が、H28年度の論文試験の学歴別合格者内訳 です。
学歴別受験生 |
受験者数 |
合格者数 |
合格率 |
---|---|---|---|
大学在学中 |
727名 |
412名 |
56.7% |
アカスク在学中 |
44名 |
22名 |
50.0% |
大学卒業 |
1,356名 |
449名 |
33.1% |
アカスク卒業 |
515名 |
93名 |
18.1% |
明暗がくっきりと分かれる結果になっています。
大学在学中の合格率はアカスク卒業者の合格率の3倍以上。
この違いは何だか分かりますか?
そうです。アカスク卒業者は「短答の主要科目(特に簿記、管理会計論)から逃げたツケ」を払わされているのです。
短答は企業法のみの受験で足りるので、正直簡単に受かります。
が、論文ではそうもいきません。「実力としての計算力」が必要なのです。
ここを真正面から受け止めずに、かわそうとした結果が、論文合格率18%に過ぎない実状です。
つまり、会計士受験的には
アカスク卒業者は、「短答受験生にとっての悪魔(厄介者)」であり、「論文受験生にとっての天使(楽勝者)」なのです。
死線の先をくぐり抜けてきた猛者に、逃げ惑う人は敵わない。
これは結果が語る真実といって差し支えないでしょう。
2.キャリアが形成されないから
正直、会計は実務に触れてナンボだと思います。
監査法人で監査実務に触れた際、或いは税理士業務として独立して以来、会計を理論云々で解決した実例を私は一つも聞いたことがありません。
実務は実務的な考えで解決するのであって、そこに純理論を振りかざしたとしても、結局は「あるべき論」になってしまい、議論が空転します。
ここに、実際に経験した事例をご説明します。
四半期財務諸表の作成においても、有価証券は四半期ごとの時価(実質価値)を測定把握すべきだと言うのが理論上の見解です。
具体的には、
市場価格のない株式について、発行会社の財政状態の悪化により実質価額が著しく低下したときは相当の減額を行わなければならないが、当該財政状態が悪化しているかどうかの判断にあたっては、四半期会計期間末までに入手し得る直近の財務諸表を使用する。(「四半期財務諸表に関する適用指針第5項」より抜粋)
では、実務で果たして実践できるでしょうか?
非上場の会社に、「四半期ごとの実質価値を算定する必要があるから、四半期B/Sを作成してくれ。」なんて果たして実効性のある指摘と言えるでしょうか。
無理でしょう。
せいぜい年一の頻度での提出がいっぱいいっぱいでしょう。(それすら出してくれない可能性もあり得ます。)
かくいう、私ですら税務クライアントから「中間決算書を作成して欲しい。」と言われた時に、「えー、意味分からないんだけど。」と言って、相当渋ったことを記憶しています。(面倒臭いので。)
純理論的に「かくあるべき」というのは、往々にして「どうやって?」という実務的な問題と表裏一体なのです。
これまで、色々な学びを経験してきましたが、これだけは確実に一つだけ言えることがあります。(これは自信あり)
それは、
実学に勝る学びはない
ということです。
テキストで理論を学ぶよりも、一問一答問題集を解くよりも、実務でその事例に折に触れて、悩みの中で解決していく。
この実学こそが、最強にコスパの良い学びであることは、ここに断言します!
だから、ときどきふと思うことがあるのです。
会計学者って一体何のために存在しているのだろう? と。
商学部や経済学部の教授が、簿記3級の概論講義を実務に即して面白く説明してくれたら、もっと会計に興味を持つ学生は増えるはずです。
つまらない自らの教材使って、つまらない講義を展開するから、夢ある1年生も「簿記って何だかつまらないね。」となる訳です。
こんな「簿記離れの戦犯」となる人の下で、今後に繋がらない教えを被る必要はないと思うのは私だけでしょうか?
この根底的な認識が「実践会計大好き人間」である松本講師がアカスクを否定する理由でもあります。
キャリアというのは、未来において意味を帯びるものでなければなりません。
特にこの先、会計士になって社会で羽ばたいていくのであればなおのこと。
仮に早稲田のアカスクに行っても、会計士業界では全く評価されません。
「ワセアカ?ああ、あの進学塾の?」的な評価です。
「親がお金持ちなんだね。」ぐらいの認識ですよ。マジで。
「俺は○○大学大学院を卒業しているんだ。」ということを自慢したければ、普通のサラリーマンにでもなればいいと思います。
以前、こちらの記事でも書いたとおり、論文合格者の4割は無職です。
会計士試験はH7年度より短答式試験を導入していて、それ以前は論文一発勝負の時代がありました。
今の大手監査法人のパートナーが受験生だった時代(平成初期の頃)は無職で3年かけてやるのが当たり前でした。(年間合格者が600名から700名ほどの時代)
卒1(大学卒業後、1年目に合格すること)や卒2は当たりまえです。
だから、会計士になるという明確な目標があるのなら、必要以上に無職を恐れないで欲しいです。
とはいえ・・・家庭の事情もありまして。。。
しかし、中には無職を許してくれない親御さんがいるのも事実です。
「卒業までに受からないなら、就職をしなさい。」
あるいは
「あなたはアカスクに行きなさい。」
と言って、各大学院のパンフレットを親が持参してくることもあるでしょう。
個人的には「大きなお世話」なのですが、大学卒業までは、親がお金の出し手であるのが通常です。
好むと好まざるとに関わらず、資本主義の世界では資金の担い手は尊重されて然るべきなので、これを盲目的に無視するわけにもいきません。
この場合の松本講師的アドバイスです。
就職かアカスクなら、絶対にアカスクです。
ただし、アカスク在学中に合格したら、迷まず中退して監査法人へGO! です。
繰り返しますが、会計士のキャリアは実務の中で積んでいくのが一番早いです。
また「卒業までに受からないなら、就職をしなさい。」なら、私は休学をおススメします。
つまり、大学4年生のその後の進路としては
無職>休学>アカスク>就職
の優先度ではないか、と私は思います。
質問者さんは、無職や休学のリスクとして三振した時のリスクが大きい旨を記載してくれています。
大丈夫です!
ここまで詳細に分析した上で質問してくる方は三振しませんから。(三振する人の特徴はまたの機会に別の記事でアップします。いつか。)
しっかりやっていけば、絶対に論文試験には3回以内で合格できます!
以上です。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。
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